vol.15 2018/10/22
外国人技能実習生の解雇について
10月は3ヶ月に一度の外部監査で監理団体の皆様の事務所を訪問
前回のメルマガでもお伝えした、機構の定期立入検査に立ち会った
皆様にお伝えできればと考えております。
お忙しいところ大変恐縮ではございますが、ご対応のほど、よろし
それでは、第15回メルマガの配信です。
今号の目次
- 外国人技能実習生の解雇について
- 技能実習制度Q&A「技能実習計画の作成を指導した監理団体が破産する等して業務の継続が不能になった場合、技能実習は継続できなくなるのでしょうか。」
- あとがき
1. 外国人技能実習生の解雇について
報道によると、日立製作所は、笠戸事業所で働くフィリピン人技能実習生20名について
2年目以降の技能実習計画の認定を受けることができず、在留資格の更新期限である
平成30年9月20日までに在留資格(技能実習)が更新できなかったこと
(=実習が継続できない在留資格(短期滞在)に変更されたこと)を理由として
解雇を通告し、賃金1ヶ月分の解雇予告手当を支払った、とのことです。
これに対し、技能実習生は、10月20日までしか在留できず、
帰国を迫られる事になりますが、個人加盟の労働組合である
「スクラムユニオン・ひろしま」に加入して解雇を撤回するよう求めている、とのこと。
通常技能実習生は在留資格(技能実習)に合わせ、雇用期間の定めのある契約を
締結しています。本件では、日立が解雇予告手当の支払いをしていることから、
契約期間途中で解雇を行ったものと考えられます。
労働契約法17条は、使用者は、有期労働契約期間について、
「やむを得ない事由」がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、
労働者を解雇することができない、と規定しています。このため、今回のケースでは、
この「やむを得ない事由」があるかどうかが問題となると考えられます。
一般に「やむを得ない事由」とは、「当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、
期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由」が
必要であると解されています(菅野和夫「労働法」(第11版補正板)334頁)。
日立の解雇理由は、技能実習計画が認定されなかった結果、在留資格(技能実習)が
更新されなかったことを理由とするものであり、技能実習生達は、10月20日までしか
日本に滞在することができない以上、「やむを得ない事由」にあたるようにも思われます。
他方で、今回技能実習計画の認定を受けられなかった理由について、ある報道によると
「国や機構は日立で適正な技能実習ができるか検査中のため、新たな実習計画は認定出来ないと判断した」
という理由が挙げられています。
実習生達は、「電気機器組み立て」技能の習得を目的に入国したにもかかわらず、
新幹線の排水パイプ取り付け等の計画外の単純作業ばかりさせられていた、と主張しており、
「実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき」が
技能実習計画認定の取消事由となっている(技能実習法16条1項1号)ことからすれば、
上記の実習生達の主張が事実と認められれば、日立が技能実習法を守らなかったために
2年目以降の技能実習計画が認定されなかったとも解釈できると思われます。
(なお、実習生達の主張が仮に事実であるとすれば、監理団体は実習生達から
技能実習計画に従った技能実習が実施されていないことを定期監査の際に
確認できていないか、確認しても指導を怠っていたということになるため、
今後監理団体としての監査責任が問われる可能性もあると思われます。)
法務省の関係者が、実習生が帰国しても、日立が適正な実習計画を出せば
国は再入国を認める方針であると伝えている報道もあること(なお、現行法では、
旧上陸基準省令とは異なり一度帰国しても2号実習計画の認定がでれば
再入国を認めることが可能となっています)からすれば、
仮に実習生達が帰国したとしても、裁判所が「やむを得ない事由」があるとは
認められない、と判断する可能性は十分にあると思われます。
今後の続報に注目したいと思います。
2. 技能実習制度Q&A
「技能実習計画の作成を指導した監理団体が破産する等して業務の継続が不能になった場合、技能実習は継続できなくなるのでしょうか。」
【質問】
技能実習計画の作成を指導した監理団体が破産する等して業務の継続が不能になった場合、
技能実習は継続できなくなるのでしょうか。
【回答】
「申請者が、技能実習計画の作成について指導を受けた監理団体・・・による実習監理を受けること」が
できなくなることは、技能実習計画認定の取消事由とされています(技能実習法16条1項2号・9条8号)。
このため、技能実習を他の監理団体に引き継いでそのまま継続することはできず、
新たな監理団体の下で改めて技能実習計画の認定を受けることによって、技能実習を継続することができます。
なお、外国人技能実習機構に問い合わせたところ、
平成30年10月初めの時点ではこのようなケースはまだないようです。
3. あとがき
このたびは第15回のメールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、
「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください
(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、
悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、
もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。