vol.20 2019/03/20
監理団体の許可取消しについて
前回のメールマガジンではベトナムの送出機関リストから2つの送出機関が削除された事例をご紹介しましたが、リストから削除された理由は明らかになっていませんでした。
今回、監理団体の許可取消しの事例が公表され、削除された送出機関と許可取消しになった監理団体が技能実習法上違法な契約をしていたことが明らかになりました。
外国人技能実習機構(以下「機構」といいます)が技能実習の適正化のため、より規制を強めていることは明らかです。技能実習制度においては、コンプライアンスに対する意識を高く持たなければなりません。機構から違法であるとの指摘を受け、取り返しがつかないことにならないよう、不安な点・気になる点がございましたら、お早めに技能実習制度に精通した当事務所にご相談ください。
今号の目次
- 監理団体の許可取消しについて
- あとがき
監理団体の許可取消しについて
2019年10月8日、法務省と厚生労働省は、千葉県と埼玉県にある下記の2つの監理団体が不適切な契約を結んでいたとして、監理団体としての許可を取り消すことを発表しました。
(外部リンク)厚生労働省|監理団体の許可を取り消しました >
記
- 国際技術交流協同組合(代表理事 石橋 淳也)
所在地:千葉県山武郡芝山町大里 56-1 - Kyodo 事業協同組合(理事長 浦塚 厚生)
所在地:埼玉県さいたま市岩槻区大字釣上 451番地2
厚生労働省による報道発表資料の別紙1、別紙2及び2019年10月9日付の日本経済新聞の報道によると、国際技術交流協同組合はベトナムの送出機関TTC VIETNAM HUMAN RESOURCES JOINT STOCK COMPANYと実習生が失踪した場合、送り出し機関が賠償金を支払う覚書を交わしていました。賠償金額は1年目に失踪した場合30万円、2年目以降が20万円だったとのことです。
一方、Kyodo事業協同組合は、同じくベトナムの送出機関であるVIET HUMAN RESOURCES CONNECTION JOINT STOCK COMPANYに支払う事前講習の委託料をキャッシュバックさせる約束をしていました。
このような契約は不適切な報酬の受け取りを禁じた技能実習法28条第1項に違反しており、監理事業を適正に遂行する能力を有するとは認められないため、同法第25条第1項第8号の基準を満たしていないことから監理団体の許可取消しなりました。
因みに、2監理団体と契約を交わしていたベトナムの2つの送出機関も、前回のメールマガジンでお伝えしたとおり9月6日付で技能実習計画の認定利用ができなくなっています。
いずれの組合の締結した契約も技能実習法に違反することが明らかなものです。こういった契約を結んでいたことが明るみに出た経緯は不明ですが、おそらく、機構の監査で発覚したというよりは内部からの通報で問題が発覚した可能性が高いのではないかと思われます。
近時、機構の監査において、お金の流れ・支払方法についての監査が極めて厳しくなっていると感じます。実務上の留意点についてお知りになりたい方は早めのご相談をお勧めします。
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【参照:〇外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)(抜粋)】
(許可の基準等)
第二十五条 主務大臣は、第二十三条第一項の許可の申請があった場合において、その申請者が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときでなければ、その許可をしてはならない。
一 本邦の営利を目的としない法人であって主務省令で定めるものであること。
二 監理事業を第三十九条第三項の主務省令で定める基準に従って適正に行うに足りる能力を有するものであること。
三 監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有するものであること。
四 個人情報(個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。第四十条第一項第四号及び第四十三条において同じ。)を適正に管理し、並びに団体監理型実習実施者等及び団体監理型技能実習生等の秘密を守るために必要な措置を講じていること。
五 監理事業を適切に運営するための次のいずれかの措置を講じていること。
イ 役員が団体監理型実習実施者と主務省令で定める密接な関係を有する者のみにより構成されていないことその他役員の構成が監理事業の適切な運営の確保に支障を及ぼすおそれがないものとすること。
ロ 監事その他法人の業務を監査する者による監査のほか、団体監理型実習実施者と主務省令で定める密接な関係を有しない者であって主務省令で定める要件に適合するものに、主務省令で定めるところにより、役員の監理事業に係る職務の執行の監査を行わせるものとすること。
六 外国の送出機関から団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みの取次ぎを受けようとする場合にあっては、外国の送出機関との間で当該取次ぎに係る契約を締結していること。
七 第二十三条第一項の許可の申請が一般監理事業に係るものである場合は、申請者が団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること。
八 前各号に定めるもののほか、申請者が、監理事業を適正に遂行することができる能力を有するものであること。
(監理費)
第二十八条 監理団体は、監理事業に関し、団体監理型実習実施者等、団体監理型技能実習生等その他の関係者から、いかなる名義でも、手数料又は報酬を受けてはならない。
2 監理団体は、前項の規定にかかわらず、監理事業に通常必要となる経費等を勘案して主務省令で定める適正な種類及び額の監理費を団体監理型実習実施者等へあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収することができる。
(許可の取消し等)
第三十七条 主務大臣は、監理団体が次の各号のいずれかに該当するときは、監理許可を取り消すことができる。
一 第二十五条第一項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
二 第二十六条各号(第二号、第三号並びに第五号ハ及びニを除く。)のいずれかに該当することとなったとき。
三 第三十条第一項の規定により付された監理許可の条件に違反したとき。
四 この法律の規定若しくは出入国若しくは労働に関する法律の規定であって政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
五 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
2 主務大臣は、監理許可(一般監理事業に係るものに限る。)を受けた監理団体が第二十五条第一項第七号の主務省令で定める基準に適合しなくなったと認めるときは、職権で、当該監理許可を特定監理事業に係るものに変更することができる。
3 主務大臣は、監理団体が第一項第一号又は第三号から第五号までのいずれかに該当するときは、期間を定めて当該監理事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
4 主務大臣は、第一項の規定による監理許可の取消し、第二項の規定による監理許可の変更又は前項の規定による命令をした場合には、その旨を公示しなければならない。
2. あとがき
このたびは第27回メールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。