vol.35 2020/5/20
新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取り扱いについて
GW明けに5月31日まで延長された緊急事態宣言ですが、本メールマガジン執筆時点において、政府は、「特定警戒都道府県」の茨城、石川、岐阜、愛知、福岡の5県を含む、合わせて39県を対象に緊急事態宣言を解除する方針を固め、14日開かれる諮問委員会に諮るとしています。おそらく、皆様が本メールマガジンをお読みになっていただいている際には多くの県で緊急事態宣言が解除されていることと思います。
緊急事態宣言の間にWEB会議にて外部監査を実施させていただきましたが、クライアントの皆様には多くの資料を電子媒体でご提供いただき、ありがとうございました。 多くのクライアントが在宅勤務や交代制勤務を採用しておられ、企業への監査も機構の指導に従ってリモートで実施されていました。技能実習を終えたにも関わらず帰国できない、あるいは技能検定が中止されて期間内に受験できないというエピソードや、さらには新型コロナウイルス感染症の影響で経営状態が悪くなり、解雇されてしまうものが出てきている、というお話も伺いました。
そこで、今回のメールマガジンでは、法務省が技能実習生の雇用維持支援について公表した内容を取り上げていきたいと思います。
今号の目次
- 新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取り扱いについて
- 特定活動(就労可)の要件
- あとがき
1. 新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取り扱いについて
令和2年4月17日、法務省は、「新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援について」を公表しました。概要は以下のとおりです。
(1)出入国在留管理庁が,新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され,実習が継続困難となった技能実習生,特定技能外国人等(以下「技能実習生等」といいます)の日本での雇用を維持するため、関係省庁と連携し,特定産業分野における再就職支援を実施すること。
(2) (1)のため技能実習生等に在留資格「特定活動(就労可)」(最大1年)を許可すること
(3) (2)において、行うことができる活動は、「受入れ機関において特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付ける活動」であること
これによって、解雇された技能実習生は、今まで認められていなかった別の業種・職種の企業に事実上「転職」することが可能になります。新型コロナウイルス感染症の影響による景気低迷によって、技能実習生等の雇用維持が難しくなる可能性が高い、ということが今回の措置の背景にあるといえるでしょう。
2. 特定活動(就労可)の要件
「在留資格(就労可)」が付与されるための要件は以下の ア ないし カ のとおりです。
ア. 申請人が本特例措置により従事しようとする業務に係る報酬の額が,日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること
イ. 申請人が,受入れ機関において特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付けることを希望していること(希望する特定産業分野に係る技能試験等の合格が必要な者に限る。)なお,製造業3分野(素形材産業分野,産業機械製造業分野,電気・電子情 報関連産業分野)については,国内において,申請人が製造業各分野で対象となっている業務区分(職種)で勤務・実習中に解雇されたものに限られる。
ウ. 受入れ機関が,申請人が特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付ける希望があることを理解した上で,申請人の雇用を希望するものであること
エ. 受入れ機関が,申請人を適正に受け入れることが見込まれること(在留外国人(就労資格に限られず,資格外活動許可を受けた者も含む。)を雇用した実績,出入国・労働関係法令の遵守等)
オ. 受入れ機関が,申請人に対して特定技能に移行するために必要な技能等を身に付けることなどについて指導,助言等を行うことのほか,在留中の日常生活等に係る支援(関係行政機関の相談先を案内及び必要に応じて当該機関に同行することを含む。)を行う担当者を確保して適切に行うことが見込まれること
(注)支援については,例えば,受入れ機関が雇用する申請人が従前に所属していた監理団体や,特定技能へ移行する際に支援を委託する予定の登録支援機関において実施することも差し支えない。
カ. 受入れ機関が,申請人を受け入れることが困難となった場合には地方出入国在留管理局に速やかに報告することとしていること
特徴的なのは要件 オ です。特定技能への移行を想定して就労するための在留資格であることから、特定技能に準じた要件が定められています。受入れ機関による支援が必要とされ、監理団体または登録支援機関による支援を行うことも差し支えないとされています。
在留資格の申請にあたり、受入れ機関が決まっていなければなりませんが、技能実習生個人が受入れ先を見つけるのは現実的には難しいでしょうから、多くの場合は従前に所属していた監理団体がマッチングをする役割を担うことになるでしょう。
特定技能の試験に合格できなければその後の就労が継続できなくなり帰国しなければならなくなる、ということを考えると、特定技能試験の対策が必須となります。したがって、監理団体または登録支援機関による教育支援が重要になってくると思われます。
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2. あとがき
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。