vol.55 2022/03/01
PCR検査の費用負担
今号の目次
- 監理費負担禁止の原則
- 入国時のPCR検査等
- 帰国時のPCR検査等
- まとめ
1. 監理費負担禁止の原則
ご承知のとおり、技能実習事業に係る費用は、その名義を問わず、直接・間接的に技能実習生から徴収することは禁止されます(技能実習法第28条1項)。
また、監理事業に通常必要となる経費等については、事前に明示の合意を取れば、これを実習実施者に負担させることも可能です(同条2項)。
ところで、昨今の状況下では、水際対策が刻一刻と変化し、また、様々なコロナ対策が求められているところです。
本稿では、監理費負担禁止原則とコロナ対策で生じる費用との関係について取り扱います。
2. 入国時のPCR検査等
入国前のPCR検査や入国後の隔離制限に要する費用が生じた場合、当該費用については、実習実施者が負担することが望ましく、技能実習生に負 担させるべきではない、とされます(「新型コロナウイルス感染症の影響に係る技能実習生への対応について」、令和3年12月28日、外国人技能実習機構HP)。
また、技能実習生が入国する際には、厚生労働省の指定するアプリ(MySOS)をスマートフォン等にインストールする必要があります。
技能実習生がスマートフォンを持っていない場合、レンタルする必要がありますが、そのレンタル費用を技能実習生に負担させることは出来ません。
但し、上記アプリを利用する目的でなく、私的にインターネットを利用するための費用等は技能実習生に負担させることも出来ます。
この場合には、私的利用のために要する費用範囲を明確に特定した上で費用を算出し、技能実習生に事前に説明し、承諾を得ることが必要となります。
3. 帰国時のPCR検査等
日本から出国する前に実施したPCR検査費用や帰国した際に生じる隔離費用については、帰国のために通常要する費用とは言えないため、監理団体等に一義的に負担の義務があるとまでは言えないとされています。
そのため、やはり費用の特定と事前の説明・承諾は必要となりますが、技能実習生に負担させることも可能です。
但し、技能実習生の国籍によっては、帰国のために必須の措置となることから、技能実習生本人に当該費用の負担が困難な事情がある場合には、監理団体等に負担いただく必要がある場合もある、とされていることには注意が必要です。
4. まとめ
以上のように、技能実習法上、大原則として、技能実習事業に係る費用は技能実習生に負担させてはならず、技能実習生に負担させることの認められる場面は極めて例外的となっています。
技能実習生が負担させるには、①技能実習事業に通常必要でないこと②技能実習事業に必要な費用と明確に区別をすること③あらかじめ技能実習生に費用の説明をし、承諾を得ることが求められます。
今後も技能実習制度に携わる皆様方に有益な情報発信を心がけて参りますので、何卒よろしくお願い致します。