vol.65 2023/01/01
技能実習生に関する派遣機関の実態調査について
今号の目次
- はじめに
- 実態調査の概要及び背景
- まとめ
1. はじめに
技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として1993年に創設され、今年で創設から30年を迎えようとしています。しかしながら、本来の制度趣旨に反して、技能実習生が失踪するケースが多く、近年は年間5000人を超えるペースで増加傾向にあります(出入国在留管理庁HP 「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期)」)。
今回、厚生労働省が初めて送り出し機関等の派遣機関に実態調査を行うという報道がありましたので、本コラムでもご紹介したいと思います。
2. 実態調査の概要及び背景
厚生労働省は2023年度、日本に派遣される外国人技能実習生の高額な費用負担や人権侵害の実態の調査のため、各国の送り出し機関に対して初めて現地調査を行うとの報道がありました(令和5年1月1日「読売新聞」)。
昨年7月に出入国在留管理庁が公表した「技能実習生の費用負担に関する実態調査」の調査結果(出入国在留管理庁HP)では、実習生が現地の送り出し機関などに支払った費用が平均54万円に上り、半数が来日前に借金していたという実態が判明しました。厚生労働省は、実習生が送り出し機関等に支払った費用の実態をさらに解明するために現地調査が必要であると判断したようです。
3. まとめ
厚生労働省による送り出し機関等への現地調査では、実習生から徴収する費用の内訳だけでなく、日本の監理団体との金銭のやり取りも調べることが想定されます。
監理団体は、監理事業に通常要する経費等を勘案して法定で定められた適正な種類及び額以外の監理費を実習実施者等にあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収することができるとされており、それ以外の場合にはいかなる名義でも手数料及び報酬を徴収することはできないことになっています。
今回の送り出し機関等への現地調査で、監理団体の違法な監理費の徴収が判明し、監理団体に対する改善命令や許可の取消しに発展する可能性もあります。
技能実習には外部監査制度も取り入れられていますので、日頃から適切な外部監査を受けることは監理団体の利益にもなり得るところです。
弊所では多くの外部監査経験を持つ弁護士が外部監査を行っておりますので、これを機にご活用いただけますと幸いです。
今後も皆様には有益な情報を発信できるように心がけていきたいと思います。
本年も何卒よろしくお願いいたします。