減給の制裁により最低賃金額を下回る場合、最低賃金法違反となるか
ご相談分野:労務問題
業種:監理団体
1 相談内容
技能実習生に問題行動があったので懲戒処分としての減給処分を課したいと考えています。
減給処分を課した結果、最低賃金を下回ってしまうことも想定されるのですが、問題ないでしょうか。
2 争点
減給の制裁により最低賃金額を下回る場合最低賃金法違反となるか。
3 解決内容
最低賃金法は、労働者に最低賃金法額以上の賃金債権を与えなければならない(要するに「額面」が最低賃金額以上でなければならない)ということに留まり、所得税、社会保険料は労基法24条1項但し書後段によって控除していると思います。
懲戒処分による減給によって、手取金額が最低賃金を下回っても、同様に最低賃金法違反とはなりません。
ただし、減給の制裁には、
(1)1回の減給額は平均賃金の1日の半額まで
(2)1月で2回以上の減給処分を課す場合も、総額で月給の10分の1まで(労基法91条参照)
という限界がありますので、ご留意下さい。
4 弁護士の所感
技能実習生の給与は最低賃金に近いケースが多いので、減給処分としての減給は許されないのではないか、という問題意識からお問い合わせをいただきました。
減給処分は労働者の経済生活に影響を与える重い処分ですので、問題行為の内容及び程度に照らして、社会通念上相当なものでなければならないことに留意する必要があります(労契法15条)。