実習実施者から実習生の身元保証を求められたとき、監理団体が断ることはできるのか
ご相談分野:労務問題
業種:監理団体
1 相談内容
実習実施者から実習生の身元保証を求められたとき、監理団体が断ることはできるのか。
2 争点
監理団体は実習実施者に対し、技能実習生の身元保証をする義務を負うのか否か。
3 解決内容
技能実習において、技能実習の体制を整備する責任は実習実施者にあります(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下「技能実習法」といいます)3条1項、5条1項)。
監理団体は、技能実習生を保護すべき立場にありますが、実習実施者に対して技能実習生の身元を保証する立場にはありません(技能実習法5条2項、39条3項・同施行規則52条参照)。
したがって、監理団体は技能実習法上実習生の身元保証をする立場になく、実習実施者から技能実習生の身元保証を求められたとしても断ることができます。
【技能実習法(抜粋)】
(基本理念)
第3条 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。
2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。
(実習実施者、監理団体等の責務)
第5条 実習実施者は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について技能実習を行わせる者としての責任を自覚し、第三条の基本理念にのっとり、技能実習を行わせる環境の整備に努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
2 監理団体は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たすとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
(認定計画に従った実習監理等)
第39条 監理団体は、認定計画に従い、団体監理型技能実習生が団体監理型技能実習を行うために必要な知識の修得をさせるよう努めるとともに、団体監理型技能実習を実習監理しなければならない。
2 監理団体は、その実習監理を行う団体監理型実習実施者が団体監理型技能実習生が修得等をした技能等の評価を行うに当たっては、当該団体監理型実習実施者に対し、必要な指導及び助言を行わなければならない。
3 前二項に規定するもののほか、監理団体は、団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務の実施に関し主務省令で定める基準に従い、その業務を実施しなければならない。
【技能実習法施行規則(抜粋)】
(監理団体の業務の実施に関する基準)
第五十二条 法第三十九条第三項の主務省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 団体監理型実習実施者が認定計画に従って団体監理型技能実習を行わせているか、出入国又は労働に関する法令に違反していないかどうかその他の団体監理型技能実習の適正な実施及び団体監理型技能実習生の保護に関する事項について、監理責任者の指揮の下に、次に掲げる方法(法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める特定の職種及び作業に係るものである場合にあっては、当該特定の職種及び作業に係る事業所管大臣が、法務大臣及び厚生労働大臣と協議の上、当該職種及び作業に特有の事情に鑑みて告示で定める方法、その他団体監理型技能実習生が従事する業務の性質上次に掲げる方法のうちにその方法によることが著しく困難なものがある場合にあっては、当該方法については、これに代えて他の適切な方法)により、団体監理型実習実施者に対し三月に一回以上の頻度で監査を適切に行うこと。
イ 団体監理型技能実習の実施状況について実地による確認を行うこと。
ロ 技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること。
ハ 団体監理型実習実施者が団体監理型技能実習を行わせている団体監理型技能実習生の四分の一以上(当該団体監理型技能実習生が二人以上四人以下の場合にあっては二人以上)と面談すること。
ニ 団体監理型実習実施者の事業所においてその設備を確認し、及び帳簿書類その他の物件を閲覧すること。
ホ 団体監理型実習実施者が団体監理型技能実習を行わせている団体監理型技能実習生の宿泊施設その他の生活環境を確認すること。
二 団体監理型実習実施者が法第十六条第一項各号のいずれかに該当する疑いがあると認めたときは、監理責任者の指揮の下に、直ちに、前号に規定する監査を適切に行うこと。
三 第一号団体監理型技能実習にあっては、監理責任者の指揮の下に、一月に一回以上の頻度で、団体監理型実習実施者が認定計画に従って団体監理型技能実習を行わせているかについて実地による確認(団体監理型技能実習生が従事する業務の性質上当該方法によることが著しく困難な場合にあっては、他の適切な方法による確認)を行うとともに、団体監理型実習実施者に対し必要な指導を行うこと。
四 技能実習を労働力の需給の調整の手段と誤認させるような方法で、団体監理型実習実施者等の勧誘又は監理事業の紹介をしないこと。
五 外国の送出機関との間で団体監理型技能実習の申込みの取次ぎに係る契約を締結するときは、当該外国の送出機関が、団体監理型技能実習生等の本邦への送出に関連して、団体監理型技能実習生等又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他団体監理型技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者の金銭その他の財産を管理せず、かつ、団体監理型技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をしないことを確認し、その旨を契約書に記載すること。
六 団体監理型技能実習の申込みの取次ぎを受ける場合にあっては、当該取次ぎが外国の送出機関からのものであること。
七 第一号団体監理型技能実習にあっては、認定計画に従って入国後講習を実施し、かつ、入国後講習の期間中は、団体監理型技能実習生を業務に従事させないこと。
八 法第八条第四項(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)に規定する指導に当たっては、団体監理型技能実習を行わせる事業所及び団体監理型技能実習生の宿泊施設(法第十一条第二項において準用する場合にあっては、これらのうち変更しようとする事項に係るものに限る。)を実地に確認するほか、次に掲げる観点から指導を行うこと。この場合において、ロに掲げる観点からの指導については、修得等をさせようとする技能等について一定の経験又は知識を有する役員又は職員にこれを担当させること。
イ 技能実習計画を法第九条各号に掲げる基準及び出入国又は労働に関する法令に適合するものとする観点
ロ 適切かつ効果的に技能等の修得等をさせる観点
ハ 技能実習を行わせる環境を適切に整備する観点
九 その実習監理に係る団体監理型技能実習生の団体監理型技能実習の終了後の帰国(第二号団体監理型技能実習の終了後に行う第三号団体監理型技能実習の開始前の一時帰国を含む。)に要する旅費(第三号団体監理型技能実習に係るものであって、第二号団体監理型技能実習生が第二号団体監理型技能実習を行っている間に法第八条第一項の認定の申請がされた場合にあっては、第三号団体監理型技能実習の開始前の本邦への渡航に要する旅費及び第三号団体監理型技能実習の終了後の帰国に要する旅費)を負担するとともに、団体監理型技能実習の終了後の帰国が円滑になされるよう必要な措置を講ずること。
十 その実習監理に係る団体監理型技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行わないこと。
十一 技能実習を行わせようとする者に不正に法第八条第一項若しくは第十一条第一項の認定を受けさせる目的、不正に法第二十三条第一項若しくは第三十二条第一項の許可若しくは法第三十一条第二項の更新を受ける目的、出入国若しくは労働に関する法令の規定に違反する事実を隠蔽する目的又はその事業活動に関し外国人に不正に入管法第三章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可若しくは入管法第四章第一節若しくは第二節若しくは第五章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、偽造若しくは変造された文書若しくは図画又は虚偽の文書若しくは図画を行使し、又は提供する行為を行わないこと。
十二 団体監理型技能実習生との間で認定計画と反する内容の取決めをしないこと。
十三 法第三十七条第一項各号のいずれかに該当するに至ったときは、直ちに、機構に当該事実を報告すること。
十四 その実習監理に係る団体監理型技能実習生からの相談に適切に応じるとともに、団体監理型実習実施者及び団体監理型技能実習生への助言、指導その他の必要な措置を講ずること。
十五 事業所内の一般の閲覧に便利な場所に、監理団体の業務の運営(監理費の徴収を含む。)に係る規程を掲示すること。
十六 前各号に掲げるもののほか、法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める特定の職種及び作業に係る団体監理型技能実習の実習監理を行うものにあっては、当該特定の職種及び作業に係る事業所管大臣が、法務大臣及び厚生労働大臣と協議の上、当該職種及び作業に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
4 弁護士の所感
今回の実習実施者(企業)の要望は技能実習と通常の雇用契約を締結することと同様のものと誤解していることが根本にあると思われますが、技能実習は、あくまで国際貢献のためのものですので、通常の雇用関係とは異なります。
昨今、技能実習に対しては厳しい目が向けられており、外国人技能実習機構による監査も大変厳しくなっています。
監理団体は、実習実施者に対し、技能実習に関して適切な指導を行っていく必要がありますので、本件でも適切なサポートができたと思います。