vol.11 2018/06/20
実習実施者の組織再編
政府は外国人労働力を見込んで、様々な施策を検討していますね。
技能実習制度における政府の本音と建て前が見え隠れするというのが筆者の意見ですが、
皆様はどのように思っていらっしゃるでしょうか。
それでは、第11回メルマガの配信です。
今号の目次
- 実習実施者の組織再編
- 技能実習制度Q&A「技能実習生から徴収できる費用にはどのようなものがあるのでしょ
うか。」 - あとがき
1. 実習実施者の組織再編
昨今の経済情勢から、様々な企業が倒産したり組織再編したりしています。
実習実施者たる企業が倒産したり組織再編したりといった事態に監理団体が直面しないとも限りません。
今回のメルマガでは、実習実施者たる企業が倒産したり組織再編したりといった事態に
監理団体が直面した場合に、どのような対処を取ればいいか、お伝えしたいと思います。
まずそもそも、大幅な債務超過に陥っている企業については、
多くの場合に技能実習生を受け入れることができません。
なぜならば、技能実習計画の認定要件の一つに、
「技能実習生に対する指導体制その他の技能実習を継続して行わせる体制が適切に整備されていること」
という要件がありますが、外国人技能実習機構は、この要件を具備するか否かを検討するにあたり、
実習実施者の事業年度末における欠損金の有無や債務超過の有無等をもとに総合的に勘案するからです。
大幅な債務超過に陥っている企業はこの要件を満たさないことが多いため、
技能実習計画の認定はおりないのが原則です。
(ただし例外的に、補完資料として、その債務超過に陥っている実習実施者たる企業と
利害関係の無い専門家(弁護士、税理士、公認会計士等)が、帳簿上は債務超過に陥っているけれども
技能実習を継続して行わせる体制は整っていることを旨とした意見書を認定申請書に
添付して提出することによって、技能実習計画の認定がおりることもあるようです)。
では、技能実習計画の認定申請当時は実習実施者の財政基盤に問題は無かったけれども、
その後の事業の失敗により大幅な債務超過に陥って倒産した、
または倒産しそうな場合は、監理団体はどのように対処したらいいでしょうか。
まず、監理団体は、対象の実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所又は支所の認定課に、
技能実習実施困難時届出書を提出しなければなりません。
その上で、技能実習生に対して、意に反して技能実習を中止して帰国する必要が無いことの説明や
帰国の意思確認を書面により十分に行ったうえ、技能実習生の帰国が決定した時点で
帰国前に機構の地方事務所又は支所の認定課に届け出なければなりません。
このとき、仮に技能実習生が技能実習継続の希望を持っている場合には、
他の実習実施者や監理団体等との連絡調整等の必要な措置を講じ、転籍を模索しなければなりません。
一方、実習実施者が吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、事業譲渡等の
組織再編を行おうとしている場合は、監理団体はどのように立ち回ればいいでしょうか。
まず吸収合併については、合併前に存続法人が技能実習計画の認定を受けておらず、
かつ、消滅法人が認定を受けている場合であって、合併後に存続法人が技能実習を行わせようとするときは、
新規技能実習計画の認定申請と転籍が必要になります。
逆に、合併前に存続法人が技能実習計画の認定を受けている場合には、
新規技能実習計画の認定申請は不要ですが、技能実習計画の変更の届出をする必要がある場合があります。
次に新設合併の場合には、新規技能実習計画の認定申請と転籍が必要になります。
このとき、認定申請時には新設法人の主体は存在しないため、
例外的に合併後の予定に基づいて認定申請書類を記載するものとし、新設法人の成立後直ちに、
その内容に違いが無い旨を報告することになります。
そして、吸収分割、新設分割の場合には、
それぞれ吸収合併、新設合併の場合と同様の手続を履践する必要があります。
最後に、事業譲渡の場合には、吸収合併の場合と同様の手続を履践することになります。
これらの異同は、技能実習生が所属する実習実施先そのものが
変更になるか否かによって生じるものと理解していいでしょう。
監理団体は適宜、新規技能実習計画の認定申請の指導や転籍の手続を行うことになります。
ちなみに、運用要領には監理団体が組織再編する場合の手続も記述されています。
もし監理団体の拡大または監理事業からの撤退を考えていらっしゃる場合には、一度確認されることをお勧めします。
2. 技能実習制度Q&A
「技能実習生から徴収できる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。」
【質問】
技能実習生から徴収できる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。
【回答】
まず、適正な計算式に則って算定された宿泊費、実費としての食費や日用品費、
水道光熱費を技能実習生に負担させることは差し支えありません。
ただし、これらの費用が技能実習生の負担であることは、技能実習生の待遇に関するものですので、
あらかじめできる限り具体的に技能実習生に説明して合意を得ておくべきです。
特に、これらの経費を賃金から差し引いて技能実習生に支給する場合には、
後のトラブルを避けるためにも、慎重に対応することが求められるでしょう。
3. あとがき
このたびは第11回のメールマガジンをお読みくださり、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、
「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください
(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、
悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、
もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。