vol.20 2019/03/20
特定技能1号外国人の従事すべき業務について
日立製作所のグループ会社である日立グローバルライフソリューションズ栃木事業所において、技能実習生の2年目の技能実習計画が外国人技能実習機構から認可をうけることができず、実習生数十人が3ヵ月以上就労することができていない、との報道がありました(毎日新聞2019年6月12日)。
報道によれば、実習生の一部は「電子機器組立て」を実習するはずが、テープ貼りや荷物の運搬が続いたとも話している、とのことです。
報道を前提とすれば、この事例も以前もこのメールマガジンで取り上げたいわゆる技能実習計画齟齬の一事例であるといえます。
この点、「実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき」は技能実習計画認定の取消事由となっています(技能実習法16条1項1号)。
技能実習計画の認定が取り消されると、5年間は特定技能外国人の受入れもできなくなり、外国人を受け入れている企業にとっては致命傷になりかねません。今日のネット社会では法令順守意識の低い企業の情報はあっという間に広まってしまいます。法令遵守の第一歩は「これっておかしいのでは?」という疑問点をそのままにしないことです。疑問点がありましたら、早めに弁護士に相談されることをお勧めいたします。
それでは、第23回メ-ルマガジンの配信です。
今号の目次
- 特定技能1号外国人の従事すべき業務について
- あとがき
特定技能1号外国人の従事すべき業務について
「移行対象職種・作業」では、技能実習計画において、必須業務、関連業務、周辺業務及びそれぞれに関する安全衛生に係る業務を定めてそれにそって実習を行うことが求められます(技能実習法第9条2号・技能実習法施行規則第10条2項第2号、技能実習法16条1項1号)。
上記のとおり、「実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき」は技能実習計画認定の取消事由となっています(技能実習法16条1項1号)。
では、特定技能1号外国人の場合はどうでしょうか。
出入国管理及び難民認定法(以下「出入国管理法」といいます)別表第1の2の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野を定める省令は、在留資格「特定技能1号」に係る「相当程度の知識又は経験を要する業務」はそれぞれの特定産業分野に係る運用方針及び運用要領で定める水準を満たす技能とする、とし、各分野の運用方針が、当該水準を満たす技能を要する業務を業務区分ごとに規定しています。
そして、上記業務区分を満たさない業務に従事していれば、違法な資格外活動(不法就労)となってしまいます(出入国管理法19条1項1号)。
例えば、宿泊業における特定技能1号外国人が従事する業務は、「宿泊分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領(平成30年12月25日法務省・ 警察庁・外務省・厚生労働省・国土交通省)によれば、「宿泊施設におけるフロント,企画・広報,接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務をいう。あわせて,当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:館内販売,館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えない。」としています。この結果、付随的であれば、事実上の非熟練労働が認められる場合があるということになります。
では、上記の関連業務にはどのような業務が当たると考えられているのでしょうか。この点、「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-宿泊分野の基準について」(平成 31年3月20日公表、法務省・国土交通省編)は関連業務の具体例として、以下のようなものを挙げています。
・ 旅館,ホテルの施設内の土産物等売店における販売業務
・ 旅館,ホテルの施設内の備品の点検・交換業務
もっとも、専ら関連業務に従事することは認められない、と解されており、加えて、法務省は、関連業務が許容される限度について、「許容される具体的な割合は個々に異なります」とするだけで具体的な割合を明らかにしていません(「外国人材の受入れ制度に係るQ&A」Q4)。
上記のとおり、関連業務が許容されなかった場合、業務区分を満たさないと判断され、資格外活動(不法就労)とされてしまうリスクがあります。このため、関連業務を担当させる場合は、最低限、同種の業務に従事する日本人が通常従事しているものかどうか、仕事の中身が異なるものとなっていないかを確認しておくことが必要でしょう。
2. あとがき
このたびは第23回メールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください (ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。