vol.20 2019/03/20
本年度の機構の監査の重点監査項目
2019年10月31日、外国人技能実習機構(以下「機構」といいます)は外国人技能実習機構監理団体部長名で、「送出機関との不適正な関係について(再度の注意喚起)」(以下、「再度の注意喚起」といいます)を公表しました。
再度の注意喚起は、前回のメールマガジンでも取り上げたとおり、法務省及び厚生労働省が令和元年10月8日付で、監理事業に関して送出機関との間で不適正な契約を締結していた監理団体について、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下「技能実習法」という。)
第37条第1項に基づき、監理団体の許可を取り消したこと、 本事案は、監理団体が、送出機関との間で、「技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める内容の覚書を交わしていたこと」、「覚書の中で、技能実習法第28条第1項の規定に照らして不適正な内容の取決めを交わしていたこと」の理由により許可取消となったものであることを指摘しています。
機構が技能実習の適正化のため、監理団体に対してより規制を強めていることは明らかです。このため、監理団体の皆様は、特にコンプライアンスに対する意識を高く持たなければなりません。機構から違法であるとの指摘を受け、監理団体の許可を取り消されるという取り返しがつかないことにならないよう、不安な点・気になる点がございましたら、お早めに技能実習制度・外国人雇用に精通した当事務所にご相談ください。
それでは、第28回メールマガジンの配信です。
今号の目次
- 機構の立入検査における重点監査項目
- あとがき
機構の立入検査における重点監査項目
機構は監理団体に年1回の立入検査を行うこととされています。当事務所が外部監査を担当している監理団体様でも10月は多くのところで立入検査が実施されました。上記のような監理団体の許可取消しが発生している状況、機構が監査を担当する職員を増員しているという話もあることに鑑みますと、今後機構の立入検査はいっそう厳しくなることが予想されます。
そこで、実際に機構の立入検査を受けた監理団体様の御了承の下、機構が立入検査で重点的に調査された項目について確認していきたいと思います。なお、その監理団体様は機構から何も指導等を受けなかったとのことですので、大変参考になるかと思います。
今般の立入検査では、まずは昨年9月のメールマガジンでも発出した一連の法定帳簿の備付状況、帳簿記載項目の漏れがないかどうか(令和元年6月10日一部改正版「技能実習制度運用要領」251頁以下参照。昨年9月以降改正が行われましたので参照頁が昨年9月のメールマガジンと異なります)の確認がなされました。その上で、監理費管理簿について以下の確認がなされました。
(1)監理費管理簿記載内容と項目確認
(2)監理費管理簿の月間支出額と月間徴収額の確認
(3)(2)と実習実施者への監理費請求書金額の突合
(4)(3)と実習実施者から徴収した領収書控の金額突合
(5)監査時に県外実施者に対する高速道路利用状況(ETC)確認
(6)送り出し機関との契約書確認と監理費月額の確認、支払状況確認
(7)入国前日本語講習実施状況確認、同委託契約書確認、同委託費支払確認
(8)口頭で送り出し機関から何らかの利益を得ていないか
(9)口頭で送り出し管理費を実施者へ請求する際に利益となるような徴収をしていないか
(例えば月額5,000円に手数料として6,000円を得、1,000円が利益となるような徴収をしていないか)
上記をみると、機構は、お金の流れを厳密にチェックしていることが確認できるかと思います。上記の過程で不透明なお金の流れがあったり、契約書の金額と実際の支払金額が合わないようなケースでは追加の調査が行われることも想定されます。
特に、送出機関との契約書に記載された当初の金額を口頭で減額する合意をしているような場合(例えば、当初の契約では送出管理費として技能実習生一人当たり1万円と契約していたが、交渉して一人当たり5,000円にしてもらえるよう交渉し、口頭で合意・実施しているような場合)は金額が変更になった経緯と本当に合意がなされているのか、さらに言えば、監理団体の利益にしているのではないか、といった点について確認される可能性が高いです。
皆様の団体においては、口頭合意で済ませてしまっているケースはございませんでしょうか。最近、「口頭の合意でも契約は有効ですよね?」という問いあわせをいただくことがあります。たしかに、口頭でも契約は有効ですが、その口頭の合意がなされたことを証明できなければ合意があったとは認めてもらえません。
立ち入り検査でも書面とのずれがあった場合は、機構から不要な疑念を招き、隅から隅まで調査を受ける可能性が高くなってしまうと思われますので、重要な契約内容の変更があった場合は、必ず書面に残すようにしてください。
なお、送出機関の所属国によっては、契約内容について特別の規制がある場合がありますので、個別の事案に対応するにあたってはくれぐれもご留意頂き、不安な点がございましたら技能実習制度に精通した当事務所へお問い合わせください。
2. あとがき
このたびは第28回メールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。