vol.20 2019/03/20
外国人技能実習生の失踪対策強化について
外国人技能実習生(以下「実習生」といいます)の数は年々増加している一方、新たな問題や課題も発生しています。
法務省は技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームを設置し、本年3月28日に「調査・検討結果報告書」(以下「報告書」といいます)を発表しました。プロジェクトチームが作成した報告書によると、平成30年に失踪した実習生は9,052人で、実習生全体の約2.1%ですが、人数としては平成26年の2倍以上となりました。報告書では失踪に対する改善策の検討が述べられています。今回は、それを踏まえて先日法務省が発表した失踪防止に向けた取り組みを取り上げたいと思います。
今後も技能実習の適正な運用のための規定等の整備が進められる予定です。監理団体の皆様は最新情報をキャッチアップし、適切な実習監理を行わなければなりません。新たな対策等でご不明な点がございましたら、お早めに技能実習制度に精通した当事務所にご相談ください。
今号の目次
- 外国人技能実習生の失踪対策強化について
- あとがき
外国人技能実習生の失踪対策強化について
2019年11月12日、法務省は、実習生の失踪防止に向けた取り組みを公表しました。具体的には下記のとおりです(出典:在ベトナム日本国大使館ホームページ)
記
1. 不適切な監理団体・実習実施者等を制度に関与させないための施策
(1)失踪者を出した送出機関・監理団体・実習実施者に対し,帰責性等を踏まえて技能実習生の新規受入れを停止
(2)相手国におけるブローカー対策を促すなど,二国間取決めに基づく対応の強化
2. 実習中の技能実習生を失踪させないための施策
(1)失踪技能実習生を雇用した企業名の公表等の検討
(2)特定技能の調査に併せて,技能実習生からも処遇状況(賃金等支払状況や人権侵害の有無)についてヒアリング
3. 失踪した技能実習生の不法就労を防止する施策
(1)失踪をさせた企業から失踪先等に係る情報収集の強化
(2)在留カード番号等を活用した不法就労等の摘発強化
(3)失踪技能実習生の在留資格取消しの強化
(4)失踪技能実習生に係る情報の関係省庁との共有
4. その他
(1)失踪・死亡事案発生時の速やかな実地検査等の実施
(2)制度の厳格化について入管庁から監理団体に対して直接周知
上記を見ても、国として本気で実習生の失踪防止に取り組もうとしていることが確認できるかと思います。失踪が発生した場合の監理団体・企業への制裁的側面が強い政策なので、監理団体としては、失踪を防ぐ取り組みが今まで以上に求められることになります。
報告書によると、失踪実習生に関して認められた不正行為721人(631実習実施機関)のうち、「割増賃金不払い」が195人、「残業時間等不適正」が231人と「労働時間」に関する不正行為が半分以上を占めていることが分かります。
従前は、技能実習法その他出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者(技能実習法10条2号・同法施行令1条)に該当しない限り、技能実習計画認定の欠格事由とはなっていないことから、労働関係法令違反の不正行為の認定を受けただけであれば技能実習計画の認定を受けることが可能でした。しかしながら、今後は、労働に関する法律に違反した場合、罰金刑に処せられなくても実習生の新規受入れが停止されるおそれがあることになります。
監理団体の皆様は、労働関係法令に違反しているとの情報を得たときには、直ちに臨時監査を実施する必要があります(技能実習法39条3項・技能実習法施行規則52条2号、技能実習法16条7号)。皆様も当然ご存じのこととは存じますが、この機会に再度ご確認下さい。
2. あとがき
このたびは第29回メールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。