vol.36 2020/7/20
介護職種の前職要件について
先月のメールマガジン「『コンビニ』は『特定技能』に追加されるか?」の結末ですが、2020年7月8日の報道によると、政府は外国人の在留資格「特定技能」の対象業種拡大をめぐり、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の原案に自民党が求めていたコンビニエンスストアの追加明記を見送り、対象業種の拡大に関して「適切に検討する」と盛り込んだ、とのことです(日本経済新聞電子版2020年7月8日)。
外国人雇用を推進している企業様からするととても残念な結果に終わってしまったのではないかと思います。
当事務所の目の前にあるコンビニにも外国人労働者が多数働いていらっしゃいます。おそらく、年齢からしても留学生の方がほとんどでしょう。
現在はコロナの関係で入国が止まってしまっていますが、日本が高齢化社会を迎えている以上、今後も外国人雇用が増えていくことは疑いないかと思います。
今後も皆さんに最新情報をお届けしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今号の目次
- 介護職種の前職要件について
- あとがき
1. 介護職種の前職要件について
先日ある方から、介護職種の前職要件についてのお問い合わせをいただきました介護職種については、通常よりも厳しい前職要件が課されていますので、その点を確認しておきたいと思います。
この点、技能実習生は「団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。」(技能実習法施行規則第10条第3項ホ)に該当することが必要であるとされています。
このうち、「本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること」については、日本において行おうとする技能実習において中心的に修得等をしようとする技能等について送出国で業務として従事した経験を有することを求めるものですが、送出国で業務として従事していた業務の名称が形式的に同一であることまでを求めるものではないとされています(厚生労働省社会・援護局「技能実習『介護』における固有要件について」7頁)。
具体的には、以下の場合が該当するとされています。
-
- 外国における高齢者もしくは障害者の介護施設等において、高齢者または障害者の日常生活上の世話、機能訓練または療養上の世話等に従事した経験を有する者
- 外国における看護課程を修了した者または看護師資格を有する者
- 外国政府による介護士認定等を受けた者
そして、「団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること」とは、以下の(1)から(3)の場合を指すとされています。
(1)教育機関において同種の業務に関連する教育課程を修了している場合(修了見込みの場合も含む。)
教育機関の形態は問いませんが、教育を受けた期間については6か月以上又は320時間以上であることが必要です。この場合、以下の資料を全て提出することが必要となります。
- 教育機関の概要を明らかにする書類(同種の業務に関連する分野の教育を行っていることが分かる書類に限る。)
- 技能実習生が当該教育機関において関連する教育課程を修了したことを証明する書類(修了見込みの証明も含む。)
(2)技能実習生が技能実習を行う必要性を具体的に説明でき、かつ、技能実習を行うために必要な最低限の訓練を受けている場合
当該技能実習を行う必要性を具体的に説明できる場合とは、
- 家業を継ぐことになり、当該分野の技能実習を行う必要性が生じた場合
- 本国で急成長している分野での就業を希望し、そのために当該分野での技能実習を行う必要性が生じた場合
などをいいます。この場合は、技能実習生に技能実習を行う必要性について具体的に記載させた理由書を提出することが必要となります。
また、技能実習を行うために必要な最低限の訓練としては、2か月以上の期間かつ320時間以上の課程を有し、そのうち1か月以上の期間かつ160時間以上の課程が入国前講習であること、1か月以上の期間かつ160時間以上の課程(実技・座学の別を問わない)が技能実習の職種に関連することが必要です。
(3)実習実施者又は監理団体と送出国との間の技術協力上特に必要があると認められる場合
教育機関の形態は問いませんが、教育を受けた期間については6か月以上又は320時間以上であることが必要です。この場合、以下の資料を全て提出することが必要となります。
- 実習実施者や監理団体と送出国の公的機関との間で技能実習制度を活用して人材育成を行う旨の協定等に基づき、技能実習を行わせると認められる場合です。この場合、実習実施者や監理団体と送出国の公的機関との間の技術協力上の必要性を立証する資料を提出することが必要になります。
以上のとおり、介護の技能実習生については通常よりも厳しい前職要件が課されていますので、受け入れに当たっては、監理団体にしっかりと確認されることをお勧めします。
2. あとがき
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、悪しからずご了承ください)。