vol.48 2021/08/01
実習生が死体遺棄罪に問われた事件
今号の目次
- 熊本地裁令和3年7月20日判決
- 妊娠等を理由とする解雇等不利益取扱いの禁止
- 技能実習制度をより良いものにしていくために
- 当事務所の紹介
1. 熊本地裁令和3年7月20日判決
技能実習生が実習期間中に妊娠をしたが、妊娠が発覚すれば、実習が中止となることを恐れ、孤立出産(双子、死産)をした実習生が死体遺棄罪で有罪判決(懲役8ヶ月、執行猶予3年)を受けるという事案が発生しました。
この事案は死体遺棄罪の成否に関して、様々な議論がありますが、刑法上の解釈は他の論考に譲り、ここでは技能実習制度に関して検討したいと思います。
2. 妊娠等を理由とする解雇等不利益取扱いの禁止
技能実習生に限らず、事業主は女性労働者が婚姻・妊娠・出産したこと等を理由に解雇その他の不利益な取り扱いをしてはいけません(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第9条3項)。
このことは、技能実習機構のHP上においても、複数回にわたり(令和3年2月16日、平成31年3月11日)注意喚起がなされているところです。
法律上、このような規定となっていることは理解していても、実習実施者・監理団体にとって、事実上の負担が生じる等の理由で、実習生に「妊娠等をしないように」などと誤った注意喚起がなされることを残念ながら耳にすることもあります。
3. 技能実習制度をより良いものにしていくために
技能実習制度をより良い制度としていくためには、技能実習生が安心して実習に励むことの出来る環境作りが大前提です。
上記判決でも言及がありましたが、妊娠等が解雇事由とはならないとはいえ、実際に給与等が減少せざるを得ないことに対するサポート体制が十分でないことに関しても議論していく必要もあります。
このケースは今一度技能実習生にとって安心出来る技能実習制度のあり方について考えさせられる事案となりました。
4. 当事務所の紹介
当事務所では、企業の皆様にとって「法務部のアウトソーシング」といったイメージでご利用いただけるよう、「chatwork」をはじめ、皆様からご相談いただきやすい環境作りに努めております。
今後も皆様のお役に立てるよう努めてまいりますので、お気軽にご相談ください。