vol.49 2021/09/01
人身取引報告書
今号の目次
- 人身取引報告書
- 強制労働・性的搾取
- 政府への改善要望
- 結びに代えて
1. 人身取引報告書
米国国務省人身取引監視対策部は令和3年7月1日、人身売買防止への取り組み等を独自に評価する「人身取引報告書」を公表しました。
4階層ある評価指標の中で、日本は第2階層と評価されています。
「人身取引報告書」の中には技能実習制度に言及する部分がありますので、以下何点かご紹介します。
なお、「人身取引報告書」の日本該当箇所の日本語訳版は米国領事館HPで見ることが出来ます(https://jp.usembassy.gov/ja/trafficking-in-persons-report-2021-japan-ja/)。
2. 強制労働・性的搾取
まず、同報告書が問題視するのは、外国に拠点を持つ送出機関や労働者募集機関が借金返済のために、技能実習生を過酷な環境下で就労させる等して、技能実習制度を悪用する点です。
次に、商業的性行為の被害として「デリバリー・ヘルス・サービス」が悪用されるケースも指摘しています。
同サービスについては「合法化されてはいるもののほぼ規制されていない」と厳しい言葉で批判がなされています。
3. 政府への改善要望
上記のような問題点について、同報告書では事前事後の対応について改善を求めています。
事前の対応としては、技能実習計画認定前に、当局が全ての契約を審査することで、雇用主に対する調査の増加、労働者が支払う過剰な手数料やその他金銭を課す契約を解除することなどを求めています。
事後の対応としては、虚偽の申請を行った者への処罰や計画と異なる労働を強制される者の認知機能の強化を求めています。
送り出し機関所属国との協力覚書では不十分と指摘するわけです。
4. 結びに代えて
技能実習に携わる者としては耳の痛い内容を含んだ「人身取引報告書」ですが、技能実習制度が問題と指摘するわけではなく、技能実習制度が悪用されており、悪用防止対策の不十分さを指摘するものです。
同報告書では技能実習制度について「この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった」と指摘しています。
制度に携わる者として、制度が本来の趣旨とおりに正しく運用されるためになすべきことは何か、改めて考えさせられる機会となりました。