vol.64 2022/12/01
技能実習生に対する賃金未払問題について
今号の目次
- はじめに
- 事案の概要
- 委託元であるワコールの対応
- まとめ
1. はじめに
技能実習生に対する賃金未払問題は、従前から大きな問題となっておりますが、直近でも愛媛県西予市の縫製会社で発生したベトナム人技能実習生への賃金未払問題を巡って大きく報道されていましたので、本コラムでもご紹介したいと思います。
2. 事案の概要
愛媛県西予市の縫製会社である小清水被服工業において、技能実習生11人に対し、違法な残業が常態化しており、2020年4月から本年9月までの間の未払賃金として総額約2700万円が支払われていなかったという問題です。
今回の件が発覚した経緯は、長時間労働が続いたため、実習生らが今年8月にNPO法人「日越ともいき支援会」に相談したことがきっかけのようです。
なお、小清水被服工業は自己破産する方針を示しており、未払給与の支払いに関して目途は立っておりません。
3. 委託元であるワコールの対応
衣料大手のワコールホールディングスは、傘下のワコールがパジャマ生産を委託していたとして、実習生の支援団体に500万円を寄付したことが報じられました(12月7日付日経新聞)。
ワコールは大阪市にある1次委託先を通じて小清水被服工業に女性用パジャマ計約3万5千枚の生産を発注しており、寄付金額は発注量に基づき決定したとされています。
委託先で生じた実習生の労働問題で金銭補償するケースは国内では異例のことであるといえます。
4. まとめ
今月号は、技能実習生に対する未払賃金問題と委託元の対応についてご紹介させていただきました。
本件9月には、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が制定され、技能実習に関する記載も含まれるなど、実習実施者及び監理団体の皆様にも人権尊重のための取組がより一層求められております。
本ガイドラインにより、特に大企業では自社だけでなく、グループ会社やサプライヤー(直接の取引先やサプライチェーン上の企業等)における人権侵害が生じていないか把握し、対処することへの関心が高まっていると考えられます。
今回のワコールの一連の対応は、本ガイドラインを意識したものであるといえると思います。
今後も皆様には有益な情報を発信できるように心がけていきたいと思います。
何卒よろしくお願いいたします。