vol.10 2018/05/21
介護業界の人手不足
介護職種における技能実習計画が初めて認定されたとの報道がありましたね。
技能実習生に関するニュースだけでなく介護業界における人手不足に関するニュースも
多く報道されているのを見て、色々思うところがあります。
それでは、第10回メルマガの配信です。
今号の目次
- 介護業界の人手不足
- 技能実習制度Q&A「技能実習制度は技能の移転を前提としていますが、特許情報も移転させなければならないのでしょうか。」
- あとがき
1. 介護業界の人手不足
介護業界の人手不足は非常に深刻です。
2025年には38万人もの介護職員が不足すると言われています。
以前から、介護業界で外国人を活用することは提言されていました。
具体的政策としても、これまでEPA(経済連携協定)に基づいて看護師候補者や介護福祉士候補者が
受け入れられてきましたが、介護業界の人手不足を補うにはほど遠い数字となっていました。
もちろん、EPAは介護分野や看護分野の労働力不足に対応するものではないという大前提はあります。
ただ、平成20年度から平成29年度までの間の看護師候補者及び介護福祉士候補者の
累計受入人数は4700人超で、看護師国家試験の合格率は10%前後、
介護士国家試験の合格率は50%前後といった数字が明らかとなっています。
また、介護の現場からはEPAによって看護師候補者や介護福祉士候補者を受け入れることの
使い勝手の悪さも指摘されています。
最近になって、政府は、技能実習制度の対象職種に介護を追加したり、
技能実習終了後に資格を取得した場合には在留期間を延長する方策を提言したり、
新たに「介護」という在留資格を設けてみたりしていますが、
これらの行動は、このような介護業界における人手不足の声を受けてのものであると推測せざるを得ません。
その一方で、外国人が安い賃金で介護施設で働くような状況も避けなければなりません。
これまで、外国人人材の確保と合わせて、介護に携わる日本人の待遇改善のために
様々な政策が行われてきましたが、外国人が安い賃金で介護施設で働くようになると、
外国人の人権問題を引き起こす可能性だけでなく、日本人の待遇改善が進まない懸念があるからです。
例えば、これまで行われてきた政策の一つとして「処遇改善加算」があります。
これは介護事業所がキャリアアップの計画を立てて自治体に報告するなど、
一定の要件を満たした場合には、自治体が介護事業所に介護報酬に給料の上乗せ費用を加算して支給するという制度で、
介護事業所は受け取った上乗せ費用を介護職員に給料として支給していく、というものです。
先日、この処遇改善加算について、厚労省が外国人技能実習生も対象に含まれるという認識を明らかにしました。
理由は、外国人技能実習生の待遇は日本人が従事する場合の報酬と同等以上にすることとされているからです。
社会の流れを踏まえると、介護職種の技能実習生に対する注目(期待と不安)は相当大きいものと予想しますが、
筆者としては介護業界の人手不足の解消のために技能実習生以外に選択肢が無いのであれば、
技能実習生が技能実習に従事しやすいように、関係機関が知恵を持ち寄って、
トラブルが頻発したり重大なトラブルにならないように、できる限り環境を整えていってほしいと願っています。
2. 技能実習制度Q&A
「技能実習制度は技能の移転を前提としていますが、
特許情報も移転させなければならないのでしょうか。」
【質問】
技能実習制度は技能の移転を前提としていますが、特許情報も移転させなければならないのでしょうか。
【回答】
技能実習計画の中で特許情報に触れるようなことがあった場合には、
特許情報だから第三者に開示しないように制約するのは適切ではありません。
技能実習計画の中で特許情報に触れることが無いのであれば、
特許情報だから第三者に開示しないように制約したとしても技能実習制度の趣旨に反することはありません。
技能実習計画の作成及び作成指導の際に慎重に調整する必要があります。
3. あとがき
このたびは第10回のメールマガジンをお読みくださり、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、
「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください
(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、
悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、
もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
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