vol.14 2018/09/20
機構の定期立入検査について
先日、当事務所が外部監査人を担当している監理団体様に外国人技能実習機構
(以下、「機構」といいます)から年1回の立入検査(以下、「定期立入検査」といいます)が入ることになり、
急遽外部監査人として同席させていただきました。
皆様のところには、もう機構の定期立入検査はありましたでしょうか?
今回のメルマガでは、上記監理団体様の御了解の下、
機構が定期立入検査でどのようなことを確認しているのか、「技能実習制度運用要領(平成30年6月)」
(以下「運用要領」といいます)を基に確認していきたいと思います。
それでは、第14回メルマガの配信です。
今号の目次
- 機構の定期立入検査について
- 技能実習制度Q&A「定期立入検査の結果、機構より勧告を受けてしまった場合、どのような不利益が想定されますか。」
- あとがき
1. 機構の定期立入検査について
運用要領145頁によれば、「機構は、監理団体に対して1年に1回程度の頻度」で
実施検査を行うことを予定しています。
この定期立入検査は、概略以下の通りの内容で実施されます。
1.監理団体自身の確認
常勤の役職員数のほか、労働時間の監理方法(タイムカード等)・賃金台帳等が
確認されます(問題のある監理団体には実習実施者の監理はできない)。
2.「第18節 帳簿の備付け(技能実習法41条)」(運用要領249頁以下)に基づく確認
以下の書類が揃っているかどうかを実地で確認され、書類の中身について
口頭で質問されることになります(下記(1)~(9)の括弧書は機構が口頭で確認した事項です)。
なお、これらの帳簿書類は電磁的記録による作成・保存も認められています(運用要領254頁)。
(1)実習実施者管理簿(一覧表を作ってください)
(2)技能実習生管理簿(同上)
(3)監理費管理簿(徴収額が支出額を上回っているケースは悪です)
(4)技能実習に係る雇用関係の成立のあっせんに関る管理簿(労働局提出書類と同様)
(5)監査報告書(監査概要も保存してあると安心)
(6)入国前講習実施記録・入国後講習実施記録(しっかりと講習を実施していますか)
(7)訪問指導記録書(遠方の場合のETC記録等も保存してあると安心)
(8)技能実習生からの相談対応記録書(回答内容をしっかり記載して下さい)
(9)外部監査報告書又は外部役員確認書
(問題があるのに指摘が無いと、場合によっては外部監査人に意見を求めていくかもしれません)
3.結果の通知
問題が無ければその旨口頭で確認されます。
問題がある場合は、指導票又は勧告書が発行される場合もあるとのことでした。
【定期立入検査に備えた注意点】
これらの項目を見て、皆様はどう思われたでしょうか?
従前より申し上げている通り、機構が公表している運用要領を遵守していることが
いかに重要かお分かりいただけたと思います。
(1)~(9)の書類を準備していない、もしくは記載が不十分な監理団体様は早急に書類をご準備ください。
機構の担当者によれば「書類がそろっていることが一見して分かる監理団体は
たいてい中身もしっかりとできているので、概略の確認で終わることが多い。
逆に、書類に問題がありそうな監理団体の場合、中身にまで踏み込んで資料の精査をせざるを得ない」
とのことです。
機構は皆様の日々の忙しさには関係なく突然やってきます。
その時になって資料がないことを嘆いてもどうにもなりませんので、くれぐれもご留意ください
(なお、今回の監理団体様は機構の担当者より「よく出来ている」旨のコメントを頂戴しております)。
当事務所はこれからも顧問弁護士又は外部監査人として皆様のサポートをして参ります。
機構の立入検査に同席することも可能ですので、
必要な場合は当事務所まで御連絡をいただければと存じます。
2. 技能実習制度Q&A
「定期立入検査の結果、機構より勧告を受けてしまった場合、どのような不利益が想定されますか。」
【質問】
定期立入検査の結果、機構より勧告を受けてしまった場合、どのような不利益が想定されますか。
【回答】
勧告を受けた事実は機構の記録に残るため、たとえ改善した場合であっても、
機構から、毎年問題が発生していないか厳しく監査されることになります。
勧告を受けた後も改善が不十分で改善命令を受けてしまった場合、
優良監理団体としての基準を満たすことが難しくなります
(技能実習法25条7号・規則31条、運用要領195頁)。
そして、改善命令に従わない場合や、改善措置を講じたとしても主務大臣から適切な措置であると
認められない場合には、監理団体の許可の取消事由となる(技能実習法37条1項)ほか、
罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象ともなります(技能実習法111条3項)。
さらには、改善命令をうけた監理団体は改善命令を受けた旨を公示されますので、
不適正な受入れを行っていたことが周知の事実となってしまいます(運用要領241頁)。
3. あとがき
このたびは第14回のメールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、
「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください
(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、
悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、
もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。