vol.17 2018/12/20
機構の実習実施者への立入検査について
12月8日、入管法改正案が参議院で成立しました。
監理団体の皆様にとって大きな法改正であることは疑いありません。
12月11日の日本経済新聞電子版によると、早速、
改正入管法に対応したサービスを提供する会社が出てきているようです。
制度の詳細はこれから主務省令で決定されることになりますが、
技能実習2号を終了している技能実習生は、検定を受けることなく
「特定技能1号」の在留資格を取得できることになっていることからすれば、
特定技能が技能実習制度と連続した制度としての側面を持っていることは明らかです。
今後、主務省令の詳細が明らかになり次第、
皆様に情報を発信して参りたいと考えております。
弁護士法人グレイスは、今後も監理団体の皆様をサポートして参ります。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
それでは、第17回メルマガの配信です。
今号の目次
- 機構の実習実施者への立入検査について
- あとがき
1. 機構の実習実施者への立入検査について
9月のメルマガでは、
監理団体に外国人技能実習機構(以下「機構」といいます)が1年に1回の立入検査(定期立入検査)をする際に、
機構がどのような点を確認しているのかを解説させていただきました。
皆様のところには、機構の定期立入検査はございましたでしょうか。
私の知る限り、機構から是正勧告を受けている監理団体様のほとんどは、
法令上作成義務のある書類を作っていない、といった形式的な面で勧告を受けてしまっています。
作成義務のある書類に漏れがないか、皆様も再度ご確認下さい。
今回は、実習実施者に機構が3年に1度の監査に入る際に
どのような点を確認しているのかを解説していきたいと思います。
情報提供にご協力いただいた監理団体様にはこの場を借りて御礼申し上げます。
実習実施者への定期立入検査は、概ね以下の流れで行われます(時間はおよそ2時間程度)。
1. 実習実施者に対する実習実施者届出書記載内容に基づくヒアリング
2. 備付帳簿の閲覧と確認
3. 賃金確認
4. 工場内立入調査
5. 宿泊施設立入調査
1. 実習実施者に対する実習実施者届出書記載内容に基づくヒアリング
まず、実習実施者が機構に提出した実習実施者届出書及び添付した
技能実習計画の記載内容を基に、実習実施者の組織、
受け入れた技能実習生の失踪状況や労働条件について確認がなされます。
2. 備付帳簿の閲覧と確認
次に、技能実習法20条・同施行規則22条所定の帳簿書類が確認されます。
(1)技能実習生の監理簿
以下の書類を確認します。
・技能実習生の履歴書(技能実習生が実在しているか)
・雇用契約書、雇用条件書等
(雇用条件が適法であるか、各種協定書に従ったものか、控除金額が適正であるかどうか)
(2)認定計画の履行状況に係る管理簿
(3)技能実習日誌
ここで計画認定申請時に提出されている時間と実態に齟齬がないかどうかを確認されます。
計画と実態がかけ離れている場合、機構から改善指導を受けるおそれがあります。
3. 賃金確認
(1)賃金台帳と出勤簿又はタイムカードをランダムに照合します。
残業時間が36協定内の時間外労働であるか、
超えている場合は特別条項の範囲内であるのか確認が行われます。
なお、年間の合計時間数を予定の25%以上50%未満に相当する時間数を変更する場合には
軽微変更届の提出が必要とされています(平成30年6月「技能実習制度運用要領」131頁)
(2)賃金台帳自体
出勤日数、労働時間、時間外労働時間を中心に照合し、この時に技能実習日誌とも照合されます。
4. 工場内立入調査
工場内立入検査では、計画認定申請時に提出している「機械、器具、工具」の使用状況を
すべてひとつずつチェックされます。
チェックの結果、以下の(1)・(2)に該当するものがあった場合、いずれも対応が必要です。
(1)計画認定書に記載されている「機械、器具、工具」で技能実習に使用していないもの
(2)計画認定書に記載していない「機械、器具、工具」で技能実習に使用しているもの
(1)については使用しないのであれば計画認定書に記載しないよう指導され、
既に計画認定通知を受理している実習計画について、「軽微変更届」を提出することになります。
これに対し、(2)技能実習に使用しているにも関わらず計画認定申請書に記載されていないものは
「認定計画外」という判断で改善指導の対象となるおそれがあります。
このため、技能実習に使用しているもので、計画に記載がない物がないか、
監査の際に必ず確認しておくようにして下さい。
5. 宿泊施設立入調査
宿泊施設については以下の点を確認し、併せて機構に提出した
「宿泊施設の適正についての確認書」に虚偽記載がないかも確認されます。
なお、宿泊施設は複数存在する場合全ての宿泊施設が確認されます。
・宿泊施設の面積は原則として実測されます
(明らかに目測で4.5平方メートル/1人を超えていると判断できる場合は実測しないこともあるようです)。
・寝室の採光確認
・台所、入浴設備、トイレの確認
・採暖等設備の確認
・非常口の場所と数、避難経路の確認
・消火器の設置場所と有効期限の確認
・衛生管理の確認
【実習実施者への立入検査の注意点】
今回は、実習実施者への機構の立入検査について解説させて頂きました。
監理団体への立入検査の際、機構の担当者が「書類がそろっていることが
一見して分かる監理団体はたいてい中身もしっかりとできているので、
概略の確認で終わることが多い。逆に、書類に問題がありそうな監理団体の場合、
中身にまで踏み込んで資料の精査をせざるを得ない」と言っていたことを御紹介しましたが、
まずは形式面が重要である、という命題は実習実施者にも当てはまることは疑いありません。
機構が突然来ても大丈夫な状態に日常からしておくことが重要ですので、
監理団体の皆様におかれましては、まずは形式的な面から実習実施者への指導を
徹底していただくようご留意ください。
2. あとがき
このたびは第17回のメールマガジンをお読みいただき、ありがとうございました。
できる限り皆様の御要望にお応えしていきますので、
「このテーマについて解説が欲しい」等の御要望がございましたら、弊所までご連絡ください
(ただし、顧問契約をいただいている方からの御要望を優先させていただきますので、
悪しからずご了承ください)。
また、私見も交えてメールマガジンを発行しておりますが、
もし万が一「これは誤りではないか」という御指摘がございましたら、合わせてご連絡頂ければ幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。